私のカメラ歴は無駄に長いんです。自分のお金で初めて買ったカメラがミノルタのα7xiだったというとお分かりいただけるでしょうか。いまでも決して写真は上手ではないし、機構に詳しいわけでもありません。
「星が綺麗だなぁ」と思ったのは小学校4年生くらいのころでしょうか。田舎で見上げた空でした。「あれがオリオン座で、あれがオリオン座」と、空を見上げますが、知ってる星座はオリオン座だけ。今もそうですけど(汗)たぶん、学校で習った星座を初めて目にしたから記憶に残っているのでしょうね。
体験学習は大事。だいたい「目に見えない星座を覚えろ」というのが、子どもには無理な話です。目に見えない地味な星座の位置なんか覚えられないですよ。かみのけ座とかいまもって分からない(汗)まぁ、学習というのは自分の経験しないことを学んでいく部分もあるので、超えないといけない線ではありますが、受験勉強のために覚えても、なかなか趣味にはつながらないですよね。このころ、部分日食を観察したような記憶があります。
小学校6年生のときかな。これまたオリオン座なのですが、父親の双眼鏡で初めてオリオン星雲を見ました。東京の空でした。「うわー、見えたー」って、えらく感動した記憶があります。記憶によれば淡いピンク色をしていたけど、それはたぶん作られた記憶。先日、自作望遠鏡で見たオリオン星雲は緑だったもの。感動はあっても必ずしも趣味にはつながるわけではないんですよね。
中学校に入ったころ、クラスに天文ファンがいて、いわゆるぐるぐる写真を見せてくれた子がいました。写真を指さしながら「全部の星が動いてるけど、一つだけ点でしょ? これ静止流星って言うんだよ」って教えてくれました。得意げな顔をしていたけど、私にはその価値が分かりませんでした。いや、珍しい写真だということは理解していたけど、それを撮ってみたいとは思わなかったです。だって、地味だもの。
高校生になってから、満月が綺麗だったので、家にあったキヤノンFTbと200mm(135mmだったかもしれない)の望遠レンズとで月を撮ってみたことがあります。家に三脚がなかったので、手持ちで撮影しましたよ。露出はどうやって合わせたんだろう。現像から戻ってきたのを見たら、ブレブレで小さくて、白飛びしていました。ここですんごい写真が撮れていたら、その後の人生が変わっていたかもしれませんねぇ。
カメラというか写真に、趣味として興味を持ち始めたのは、大学生になってからだと思います。家にあったコンパクトカメラを使って、いわゆる街撮りをしていました。で、ミノルタのα7xiを買ったと。Aマウントのお付き合いはそのころから。小さな駅前の小さなカメラ店でした。当時はフィルム時代だったので、フィルムを買うたびにそのお店に行って、主人と話をして、撮影技術や機材のこと、いろいろ教えてもらいました。
社会人になってからは、福井に潜伏した時期があったこともあり、風景写真を撮ることが多かったですね。福井には一乗谷っていう遺跡があって、ここが夜になると真っ暗。moritoさんの作例にもありますが、風光明媚で星がいっぱい見えて綺麗でした。そのときに見たでっかい火球が忘れられません。声をあげたくらい大きかったんですよ。
こんな忘れられない経験をしているのに、しかも、写真を撮るのが趣味なのに星空を撮ろうとは一度も思わなかったんです。花火の写真で多重露光もしたけれど、星を撮ろうとは思わなかったです。面白いですねぇ。
当時、三脚やレリーズも使っていました(花火を撮っていたんだから、当然ですよね)。カメラはニコン機も合わせて3〜4台になっていたかな。レンズは200mmもあったはずだけど、空に向けようとは思わなかったですね。コレクションは、広角中心でしたね。そのときの20mmはいまも使っていますよ。

今思えば、星景写真を撮る機材は揃っていたわけですよね。星空を見て感動もしていたし、月光浴風の写真も撮っていたのに、星にレンズが向かわない。写真に興味を持ってウン十年間、星空を撮ることがなかったんです……。
写真を始めた当時、竹内敏信、浅井慎平あたりの作風が好きで、どんな機材やフィルムを使っているのか調べたような気がします。「あ、私にも撮れるんだ。撮りたいな」と思ったら、どんな機材が必要なのか調べたり、人に聞いたりはしたと思うのですよ。いまはネットがあるから、さらに楽に調べられますよね。
でも、単純に天体写真を撮りたいと思わなかったから、レンズが空を向かなかったのでしょうね。
その直接的な理由は分かりませんが、星を撮ったら流れるのは分かっていたし、ぐるぐる写真を積極的に撮りたいとは思っていなかったし(いまもそう)、M42とか普通の機材で撮れるとは思っていなかったというのが理由だと思います(実際、M42はフィルムと普通の機材じゃ難しそう)。
要は、流れない星の写真とか星雲や銀河の写真っていうのは、天文台で撮るような特別な写真であって、「私には撮れませんよー」って初めから決めつけていたような気がします。
そう思えば、天体写真=天文台にあるでっかい望遠鏡というイメージも人を遠ざけているかもしれませんね。実際、カメラ好きの友人に「望遠レンズでも星が撮れるんだよー」って話したら、「えっ、そうなの?」と驚きます。
ここから先、友人らは二つのグループに分かれます。「俺、風景が好きだし」と言ってせいぜい手をだすのは星景写真。これがまた上手いんですけどね。彼らの関心をひくのは、どちらかというと星の明かりより地上の明かりの方です。
もうひとつのグループは、星景写真やぐるぐる写真を撮ったうえで「ポラリエ買っちゃおうかなぁ」と悩む人たち。でも、被写体として月やオリオン星雲くらいしか知らないので、「ほかに撮る天体あるの? 稼働が上がるんだろうか?」と実際に買うところまでいきません。
私の場合は、星景写真にM42が写っていたのがきっかけで、もっと大きな写真が撮りたいと思うようになりました。前回のエントリーで書いたように、800mmを買えば大きく撮れると単純に思って、チャレンジすることになります。あの失敗写真を見たら、ふつうは続きませんよね。私の場合は、自分の腕ではなくて機材のせいにしたから、続いているわけですが(笑)

まず、レンズを夜空に向けてもらうには、「特別な機材はいらない」ということがスタートなんだろうと思います。また、田舎でないと撮れないという前判断も払拭したいところ。「都市星景」なんてジャンルがありますが、うってつけなのかもですね。ビクセンさんが都心でやっているようなイベントも大事。
でも、星空を見ただけ、撮っただけでは趣味に続きません。私の経験からは、次に来るのは「大きく撮りたい」「ほかにも撮りたい」「星について知りたい」と欲を喚起することが大事なんではないかと。私は、自分が撮った星景写真をきっかけに、星ナビの読者投稿か何かを見て「こんな天体写真がアマチュアにも撮れるの? 機材を揃えたら、私にも撮れるんだよね?」と思ったんだと思います(残念なことに、ここ記憶にない)。何にしても「オレにもできるかも」って思わせること大事ですよね。
ただですよ。そこで「よし、じゃあ望遠鏡買う!」と思ってショップさんに聞いたら「何撮りたいんすか? 星雲すか? 惑星すか? 万能な望遠鏡なんてないんすよ」と冷たく言われる(私のケース。実際はもう少しだけ丁寧な言葉遣いなんだけど)。
「え、星を綺麗に撮りたいだけなんですけど。それじゃだめですか? 星雲専用って何ですか? 難しそうだし、面倒くさそうだし、やっぱりやめとく」と思いますよね。ビギナーって知らないことだらけなわけです。ブツも高いし。諦める理由はいくらでもありますよね。私の場合、結局、別のショップさんが丁寧に相談に乗ってくれたから、そこで買いました。
アキバ周辺の天文ショップは、どこに行っても店員さんは「いらっしゃい!」を言わないし、雰囲気暗いし、店構えからして入りづらいし、声もかけづらい。声をかけると親切に教えてくれる店員さんもいるんですけど、終始、ムスッとしている店員さんもいます。私みたいな内気な人間は、声をかけられずに帰っちゃうと思います(いまでも目的がないと行きづらいもん)。過度にも思える愛想や熱心な営業に疲れてしまう自動車ディーラーとは対照的です。
ネットのナントカ袋にも似たような投稿がたくさんあって、「ローパスフィルター取らんと写らへんでぇ」「天体写真は芸術じゃなくて科学なんだぜ」「勉強してからこいやー」などなど、ハードル高そうに言われたら(私は言われてないけど)、普通、前に進めませんよ。ビギナーはね、自分ができることから教えてほしいの(笑)
私が恵まれていたのは、たまたまこうやってブログを始めたら、ASI1600つながりが縁で、みなさんが優しくアドバイスをくださったり、知らないことでも根気よく教えてくださったりしてくれたことです。本当、感謝しています。
こうやって書いているうちに、ビギナーが気軽に相談できる雰囲気のショップさんって大事だなって思いました。昔は、フィルムを買うたび、現像するたびにカメラ店に行ってたんだよな。ショップさんが私の相談相手でした。今思えば、無駄な買い物もしたけど、提供していたのは商品だけじゃなかったんですね。
みんながみんな星友を持っているわけではありません。消費者、とりわけビギナーにとってショップは最初のコンタクトポイントです。まずは「ショップに相談してみよう」と思えるホームページ作りや「ふらっと雑談しに寄ってみよう」と思わせる店の雰囲気作りは大切じゃないかな。そしたら、天文ファンがもっと増えないかな?
気づいたら、長文になってしまっていたよ! 最後まで読んでくださった方、ありがとうございました!
この記事へのコメント
けむけむ
多分、大人になって星撮る人って、こんな感じなんですよね。
ガキの頃、少し齧ってると、当時出来なかった事に突き進むって方向もあるようです。
何が写ってるか分からない彗星を撮るとかw
にゃあ
オヤジ
皆さん、昔から何らかの天体少年を引っ張った真面目な青春時代だったんですね。
今、そのまま天体壮年とか言う方も入らっしゃいますけど。
オヤジは、宮大工していた叔父がnikonの高いカメラ(当時)を持っていたの、ダメ元で、中学の修学旅行(熊本城・水前寺公園・鹿児島他)に行く時、叔父にカメラを貸してと言ったら一つ返事で。
叔父も使いこなすのが大変だったようで、出発までの2週間、毎日、建前を控えた家の写真をオヤジが撮って、その日に叔父がDPEへの繰り返し。
あれが、最初で最後(面倒臭い)のカメラでした。(爆)
普段は、女の子ばかり追いかけてました。(汗)
子供が生まれ、デジカメ・スマホカメラは簡単でしたが、2014年11月に一眼を数台購入してからですが、やっぱり、難しくて、何もメニュのない冷却CMOSカメラ一本です。(爆)
にゃあ
オヤジ
おギャーと生まれた時もありましたよーーーだ。(爆)
morito
私の潜伏地域に潜伏していた時ってブログやってましたか?
虚ろな記憶によると、取引先の方と一乗谷に写真撮りに行った!って記事読んだことあって...
もしかして にゃあさん??? んなぁ訳ないか...
で、天文ショップ
>どこに行っても店員さんは「いらっしゃい!」を言わないし.....
そそ!素人相手しませんよぉ!ってオーラ出てますよね!!
>勉強してからこいやー
あぁぁぁぁ.....
私が初めて自分で望遠鏡購入しようとネット(DOSの頃)の天文系で質問とかした時「もう少し基礎知識つけてから来いよ!」みたいな事言われたなぁ。。。
当時のこの世界の方ってお高く留まっている方が多くて、こんなんじゃ人口増えないよなぁ...って思った。
でで、現在は天体撮影されている方も以前よりは格段に増えて、ブログ等で公開されている方も多いので初めての方も気にせず書き込んで、質問してくれると良いのですけどねぇ。。。
ただ、天体撮影サイトで質問とかって初めての人にはには敷居が高いんじゃないかなぁ...って思います。
ちなみに家とこって、できるだけ記事に専門用語を使わない様にしているのですが、
以前よくコメくれていた「一般撮影メインたまに星」って方に、素人の私ではもうコメできないなぁ...って言われてしまった....
あぷらなーと
読んでるコチラまで、なんだかノスタルジーに浸ってしまいました。
落ち着いたら、こちらの天文入門時の様子も書いてみますねー。
初心者の方に対して行うアドバイスについては、いきなり高度なことを要求しなくてもいいのになー、などと個人的には思います。
望遠鏡でも、「安物の屈折経緯台のアイピースをスマホに覗かせて月面をパシャリ」あたりから楽しんでもらえれば良いと思うんですがねー。
・・・で、「他にこんなのも撮りたい」って思ってくれたら、じょじょに『沼』へのお誘いを・・・うひひ(笑)。
にゃあ
にゃあ
にゃあ